抗PD-1抗体の特許分析(第1回)

序. 抗PD-1抗体のいま

国内で小野薬品工業が手がける免疫チェックポイント阻害薬 抗PD-1抗体:イプリマブ(商品名:オプジーボ)がメラノーマ治療薬として製造承認されたのが2014年7月。これは世界で初めて承認を獲得した”免疫チェックポイント薬”と話題になりました。2015年12月には非小細胞肺癌、2016年8月に腎細胞癌への適用承認が発表され「日本が産んだ画期的抗がん剤」である点とその(桁違いに)高価な薬価が話題となり、癌患者様やそのご家族のみならず、多くの人々の関心を集めたのは記憶に新しいことと思います。

国内がこの画期的治療薬オプジーボで盛り上がる中、これに水を差す話題が米国で持ち上がりました。2014年9月にMerck社による新たな抗PD-1抗体であるペンブロリズマブ(商品名:キートルーダ)がFDAによってメラノーマ治療に対して承認されたのですが、それに伴い小野薬品工業がMerckによる特許侵害を訴えていたのです。

その一方で、抗PD-1抗体の先駆的研究者の一人が所属する米国Dana-ferber cancer institute(DFCI)から小野薬品の出願に対して「DFCIの研究者を発明者に加えるように」との主張が持ち上がっています。

これにより、抗PD-1抗体をめぐり3陣営が入り乱れての特許係争が露わになってしまいました。

特許係争、高価な薬価、類薬の誕生……暫くは大きな話題を提供するであろう抗PD-1抗体ですが、公開されている特許情報から各社の思惑や今後の市場展開を読み解くべく、分析をしてみることにしました。

 

1. 分析母集団をつくる

全文系特許データベースであるTotalpatentを使い母集団を作成しました。
検索式

上記の検索式で設定した約430件の特許群とPubmedで簡易的に作成した約800件のデータを、それぞれ出願年(論文は発行年)ごとに集計しました。

その結果が下のグラフです。

図1:出願、論文数推移

    • 論文、出願件数の推移を示す。論文の検索はPubmed、出願はTotalpatentによる。
    • 最初のPD-1抗体に関する論文は1992年(公開年)、出願は2000年(出願日)である。
    • いずれも2012年頃を境として急激に件数が増加している。
    • 今後暫くは減少に転ずる傾向は見られない。

分析はまだまだ続きます(第2回へ)