抗PD-1抗体の特許分析(第2回)

前回の分析では、抗PD-1抗体に関連する特許群を作成しました。
この特許群とpubmedで収集した抗PD-1抗体論文データを、それぞれ出願年と公開年で集計し、出願と論文発行の推移を俯瞰しました。

今回は前回作成した特許群データについて、詳しく中身を吟味していこうと思います。

2. メインプレイヤーを探る

特許群を出願人別に集計しました。4件以上の出願を持つ出願人をここに掲載します。尚、出願人名は2016年8月時点のものに基いています(その時点までの権利移譲、企業買収、社名変更などの情報が反映されています)。

    • 最も多い出願はBMSによる33件でした。提携する小野薬品は10件。
    • Dana-Farber癌研究所(DFCI)はこれに次ぐ26件。共同出願するエモリー大が9件、DFCIへのグラント提供元と思われDFCIと共 に共同出願に名を連ねるNIH,DHHSも同様に多い。
    • BMS-小野陣営、DFCI-エモリー大陣営についで、Wyeth(現Pfizer)と共同出願を多く有するMedimmune(現AstraZeneca)が19件と多くの出願を有している。
    • DFCIと、Brigham & women’s hospitalなどを有するハーバード大を除けば、大学としてはジョンズ・ホプキンス大の16件が最も多い。
    • 既にこの分野でパイプラインを有し、臨床試験を進めているMerckによる10件、Genentechによる8件が上位に見られる。
    • Amplimmune,GSKはそれぞれ3件の出願が見られるが、両者を実質的に同組織と見れば6件の出願を有し、業界でインパクトを保持していると言える。

3. メインプレイヤーの出願動向(出願時期)

上述した23社をメインプレイヤーとして、彼らの最初の出願時期やその後の出願活動を眺めてみます。下図は(出願人名×優先日)で作成したバブルグラフで、バブルの大きさが出願件数を反映しています。

    • 通算で4件以上の出願を持つ23社を主要プレイヤとして分析した。
    • 主要なプレイヤの中で、最も早い時期(優先日ベース)に出願を有しているのはDFCI(及びグラント提供元のNIH,DHHS)であった。
    • 一方、小野薬品及びWyeth(現Pfizer)-Mediummune(現AstraZeneca)陣営は、DFCIに1年遅れる2002年に優先日をもつ出願を有していた。
    • Yedaグループによる出願は2013年頃が最初であり、この分野の新規参入プレイヤといえる。タンパ大に属するMoffit癌センターも同様。
    • Wyeth,Medimmuneによる出願が一見途絶えているように見えるが、PfizerもしくはAstraZenecaにより体制は引き継がれ出願が継続していると推察される。
    • 主要プレイヤはいずれも現時点まで出願を継続しており、主題の中心は、基礎からアプリケーションに遷移しつつあるものと推測される。