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[論文] スタンフォード大 補体系の異常が変形性関節症を引き起こしていた (2011/11/25)

軟骨の摩耗により起こると考えられていた変形性関節症に、補体系が関与していたことをスタンフォード大の研究グループが報告しました

研究グループは変形性関節症患者の滑液などのサンプルから関節部分で補体の異常な活性化を発見し、膝関節半月板切除による変形性関節症のモデルでC5抗体による中和で変形性関節症の症状を抑えることから補体の関与を明らかにしました。さらには、膜侵襲複合体であるMACが軟骨細胞に結合することにより関節を攻撃し、炎症因子や分解酵素の発現を誘導して炎症を悪化させていることもわかったそうです。

体を細菌などから守るシステムである補体系が、自分の体を攻撃してしまうために、炎症が起こっていたということで、変形性関節症は自己免疫疾患に似た状態とも言えると思います。論文にあるようにC5抗体で変形性関節症の症状を緩和することは可能かもしれませんが、完全な治療となると、補体の制御系がもう少し明らかになる必要がありそうです。

変形性関節症のほかに補体の関与が疑われている疾患としては、アルツハイマー病や加齢性黄斑変性症があり、加齢性黄斑変性症では大塚製薬とAcucela社が補体の活性化を抑える新薬を開発中です。補体は古くから知られている免疫システムですが、疾患への関与から近年注目されているようです。

[論文] CureFAKtor Pharmaceuticals FAK阻害剤がすい臓がんの進行抑制に効果 (2011/11/22)

Focal adhesion kinase (FAK)というと接着に関係したキナーゼ、というイメージですが、細胞接着のほかにも細胞増殖やアポトーシス抵抗性など多様な機能をもつ分子であることが知られ、近年では腫瘍に発現することから、がんの進行や転移への関与が研究されています。

CureFAKtor Pharmaceuticalsの研究グループが2011 AACR-EORTC-NCI Molecular Targets and Cancer Therapeutics Conferenceで発表した報告によると、CFAK-C4というFAK阻害剤をすい臓がんのマウスへ投与した実験で、がん細胞の成長を40-60%抑えることができたそうです。

このFAK阻害剤は腫瘍血管系に発現し腫瘍の転移などに関与するVEGFR3とFAKの結合をブロックするという作用機序をもっており、腫瘍に特異的に発現するVEGFR3に注目した点が、すい臓がんの進行抑制という大きな効果として表れたのではないかと思います。それから、腫瘍の転移にもVEGF関連の分子が関与していることに少し驚くとともに、糖尿病などで新しい血管が必要な場面を除いて、やはりVEGFと名前がつく分子はヒトに害を及ぼす働きしかしていないのだと思ってしまいました。だからこそ新薬開発には欠かせないターゲットでもあるのですが。

すい臓がんは自覚症状が出にくいため発見が難しく、他のがんと比較して治療が難しいと言われています。治療薬としてはジェムザール(イーライリリー)やティーエスワン(大鵬薬品工業)が知られていますが、どちらもDNA合成阻害剤であるため副作用の問題があることから、今回のFAK阻害剤のようにがん細胞により特異的に働くような新薬の登場が待たれます。それにしても、社名にFAKを冠するCureFAKtor Pharmaceuticals、FAK阻害剤だけで会社を作ってしまうなんて、夢があっていいなと思います。

[論文] UCSF大 すい臓セロトニンとセロトニン作動性転写因子Pet1の機能を解明 (2011/11/10)

一見関係のなさそうな二つの物事でも、つきつめてみるとつながりが見えてくることがあります。UCSF大の研究グループはセロトニンを産生する脳のニューロンと、インシュリンを産生するすい臓のislet細胞を比較して、ホルモンを産生する細胞として似ている点を研究してみたところ、すい臓のislet細胞でもセロトニン産生に必要な遺伝子のセットが発現していることを発見し、さらに、セロトニン作動性の転写因子であるPet1の発現を制御するホメオドメイン転写因子が、islet細胞とニューロンで同じNkx2.2であることも明らかにしました。
すい臓のislet細胞でもセロトニンを産生しているという新たな知見が得られたということも重要なのですが、脳のニューロンとすい臓のislet細胞、ふたつは細胞の種類は違っていても、セロトニンを産生するという機能については同じ遺伝子でまかなっていたということで、生物は複雑にみえて、単純にして合理化している部分もあるようです。
また、研究グループはPet1がすい臓beta細胞のインシュリン遺伝子の制御因子に結合することと、Pet1欠損マウスではグルコース耐性能が十分に機能しないことが実験で明らかになったことから、糖尿病治療の手段としても使えるのではないか、としています。

糖尿病治療薬の新薬開発では武田薬品の2型糖尿病治療薬TAK-875の臨床第3相試験開始や、日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーの2型糖尿病治療薬トラゼンタ(製品名リナグリプチン)の製造販売承認取得など活発な動きがあるようです。ただ、治療薬といっても、今のところ根本的な治療ではないので、患者さんは毎日薬を飲み続けなければならないという問題があり、今後は根治療法を目指す必要もあるのではないかと思います。

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