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ロゼッタゲノミクス 血中microRNAを利用した心不全診断法開発へ (2011/07/29)

ロゼッタゲノミクスのニュースリリースによると、心臓の収縮機能不全の患者血液中のmicroRNAを同定する実験により健常者と比べて4つのmicroRNAの発現レベルが特異的に上昇することが明らかにし、これらをマーカーとした心不全診断の方法を検討しているということです。

microRNAとはnon-coding RNAの1種であり、多くの遺伝子やたんぱく質の発現制御に関与しています。近年になってmicro-RNAがエキソソームという小胞に包まれた状態で細胞外に分泌されるということが明らかとなり、血中でも安定な状態で運ばれているということがわかりました。がんの疾患では血中のRNA量が増えることが知られており、血中の核酸の研究から、数十種類のmicroRNAががん疾患に関与することがわかり、バイオマーカーとして、がん診断への応用が検討されています。実際に特定のmicroRNAを疾患診断用のバイオマーカーとして、あるいは遺伝子治療に用いるとして多数の特許が出願されており、microRNAに対する注目度の高さがわかります。
心不全(heart failure)は、構造的あるいは機能的な原因により心室への血液の出入りが損なわれる疾患で、日本には推定160万人、アメリカでは500万人もの患者さんがおり、早期の発見と治療が必要な疾患であることから、血液のように容易に採取できるサンプルから心不全の診断が可能になれば、重症化する前の発見、治療が可能になると考えられます。また、microRNA運搬の役目をはたしているエキソソームについては、siRNAのような核酸医薬をはこぶデリバリーシステムとして使えないか研究がされており、オックスフォード大のグループでは、マウスを用いた実験でエキソソームを用いる方法により脳に特異的にsiRNAを到達させたことを報告しています。免疫反応を減らすために自己由来の樹状細胞を採取、エキソソームの膜タンパク質とニューロン特異的に発現するRVGというペプチドを融合させたタンパク質を発現させ、ここから精製したエキソソームにGAPDH siRNAをエレクトロポレーションしたものを静脈内投与したところ、脳のニューロン、マイクログリア、オリゴデンドロサイトへ特異的に運ばれ、GAPDH siRNAによるノックダウンを確認できたということです。RVGのように組織特異的に運搬されるようなタグが見つかれば、エキソソームを用いたsiRNAなどの核酸医薬の可能性が広がると考えられます。

プレスリリース

中外製薬 「アクテムラ」皮下注製剤の関節リウマチに対する有効性確認 (2011/07/22)

中外製薬によると、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ」の皮下注製剤の関節リウマチへの効果が第III相臨床試験で確認されたそうです。

関節リウマチは世界中で約2100万人が罹患しているといわれ、全身の関節における滑膜の炎症を特徴とするこの疾患は、自己免疫疾患のひとつであることがわかっています。自己免疫疾患とは、通常は作られないはずの自分の体の成分に対する抗体(自己抗体)が何かのきっかけで作られ、自分の体が攻撃されることにより起こる疾患で、関節リウマチの場合は抗CCP抗体が原因のひとつであることがわかっているそうです。関節リウマチの治療には、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛薬やステロイド、免疫抑制剤のメトトレキサートがありますが、近年では炎症のメカニズムに注目した関節での炎症を制御するための抗体医薬品が続々と開発されています。

炎症を引き起こすサイトカインのひとつであるTNFαに着目したものでは、TNFαのレセプターへの結合を阻害することにより炎症を抑えるというメカニズムで、TNFαモノクローナル抗体のインフリキシマブ「レミケード(セントコア/田辺三菱製薬)」、TNFαレセプターの一部を免疫グロブリンと融合させたエタネルセプト「エンブレル(ファイザー/武田薬品)」などが開発されています。しかし、TNFαを阻害するだけでは炎症を抑えられない場合があり、同じ炎症性サイトサイトカインであるIL-6に対してレセプターへの結合を阻害する「アクテムラ」、炎症細胞であるT細胞の働きそのものを抑制するアバタセプト「オレンシア(ブリストルマイヤーズ)」など、阻害箇所の異なる抗体医薬品が複数開発されており、治療への選択肢が広がっています。

また、関節リウマチ以外の自己免疫疾患でも同じような炎症反応が起こっていることが考えられるため、疾患における炎症発生の機序が明らかになれば、他の自己免疫疾患への適応が広がる可能性が考えられます。

プレスリリース

ブリティッシュコロンビア大 糖尿病網膜症のための新規マグネティックDDS (2011/07/15)

ブリティッシュコロンビア大のグループはφ6mm x ~500μmのマイクロリザーバーに抗がん剤のひとつである微小管脱重合阻害剤のドセタキセル(DTX)を内包し、マグネチック PDMS (polydimethylsiloxane) メンブレンで封をした装置を用い、外から磁場を与えることで、マグネチックメンブレンにあいた穴からDTXを一定量放出させる、というドラッグデリバリーデバイスを開発しました。このデバイスはバッテリーを必要とせず、実験では35日間にわたってDTXを放出することができたと報告しており、研究グループでは目の裏側にこのデバイスをインプラントする方法で糖尿病性網膜症治療への応用を検討しているということです。

イメージ図

網膜疾患に対する投薬においては、点眼薬や眼軟膏といった眼科特有の投薬法では網膜への移行性が非常に低いために高濃度の投与による副作用が懸念され、また全身投与の場合でも血液網膜関門により薬物移行が制限されてしまうという問題があります。これらの問題を解決するためのドラッグデリバリーシステム(DDS)の方法として、硝子体内投与や硝子体内インプラント、強膜プラグなどが研究、開発されていますが、決まった濃度の薬剤を決めたタイミングで放出させるという装置はこの研究グループによるものが初めてのようです。

糖尿病性網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、日本では成人の失明原因の第一位となっています。糖尿病により血糖の高い状態が続くことで網膜の細い血管が損傷をうけ、血管の変形やつまりを起こし、網膜が虚血状態となると、血管新生を起こして硝子体内への出血から視野を邪魔し、さらに増殖組織といわれる線維性の膜が出現することにより網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病性網膜症の治療には血管新生を起こす可能性のある網膜の虚血部位をレーザーで凝固させる治療法がとられますが、正常な網膜の一部も犠牲となり、術後の視力が落ちる場合があるというリスクがあり、このデバイスによるDTXの投与が可能になれば、レーザー手術によらず異常な細胞の増殖を抑制して症状の進行を抑えられる可能性があります。また、このドラッグデリバリーデバイスは、糖尿病性網膜症だけではなく、他の網膜疾患にも応用できる可能性があり、さらには網膜以外にも必要な濃度の薬剤を到達させることが難しい場所への利用も期待されます。

Lab on a Chip誌へのリンク

ノバルティスファーマ・小野薬品工業 体に貼るタイプの認知症治療薬が国内で初めて承認、発売へ (2011/07/08)

ノバルティスファーマの「イクセロンパッチ」と、小野薬品工業の「リバスタッチパッチ」がアルツハイマー型認知症の治療薬として認可され、7月に発売されるそうです。いずれもアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるリバスチグミンという薬効成分を用い、経皮吸収型製剤であるパッチ剤を1日1回貼付することによりアルツハイマー型認知症患者さんの記憶力改善、日常生活維持に効果を発揮するというものです。

パッチ剤は経皮吸収により一定の薬物濃度を維持でき、急激な血中濃度上昇がなく、消化管での代謝の影響を受けにくいという特徴があります。また、パッチ剤は貼っていることが目に見えるため、服薬が簡単に確認できること、万が一副作用が生じた場合も、剥がすことによってそれ以上薬物が体内に入ることがないという利点もあります。

ノバルティスのプレスリリースによれば、リバスチグミンのカプセル剤とパッチ剤の比較において、投与スケジュールを守りやすい、使い勝手が良い、日常生活の中で支障となり難いなどの理由から、カプセル剤よりもパッチ剤の方が好ましいという回答がアルツハイマー型認知症患者さんの介護者から得られたそうです。また、目標用量のリバスチグミンのパッチ剤投与は、有効性は最高用量のカプセル剤を投与した場合と同等であり、吐き気や嘔吐といった症状は3分の1程度に留まっているということです。

リバスチグミン自体の特許はもう切れており、リバスチグミンのパッチ剤の特許については、最初の特許が2012年8月に切れるということで、海外ではジェネリック医薬品が準備されつつあるようです。製剤の処方を変えることにより副作用の軽減、患者さんやその介護者のQOL向上につながったというひとつの例であり、薬の開発における製剤化検討についてはこれからも様々な発展が期待されます。

アルツハイマー型認知症治療薬については、1999年に承認されたエーザイ/ファイザーのドネペジル「アリセプト」が国内唯一の治療薬でしたが、昨秋以降第一三共のメマンチン「メマリー」、ヤンセンファーマのガランタミン「レミニール」が相次いで承認されており、リバスチグミンも含めて認知症治療薬の選択肢は広がっています。

プレスリリース